害虫防除技術研究所 所長のインタビュー 「蚊との関わり」
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リポーター:では、よろしくお願いします。まず、どうして蚊の研究をするようになったのですか? 白井:実家の庭に蚊が多くて、蚊に困っていました。一方、昆虫好きだった私は、水生昆虫などに興味を持っていました。昆虫学が学べる大学を目指し、昆虫学教室に入りましたが、いつしか、人の役に立つ形で昆虫に関わる仕事がしたいと思い、害虫や殺虫剤関係に興味を持つようになりました。そして、意外に蚊の対策用品について、蚊取り線香などの以前からある対策しかないことがわかり、もっと効果的な対策ができないかと思うようになりました。それには、本格的に蚊を学ぶことが必要と感じ、それまで本格的にできなかった蚊の研究を、ついに富山医薬大の上村清先生のもとでできることになったのです。 |
| リポーター:なるほど、様々な経緯があったのですね。 白井:はい。蚊の生態などに関する研究はそれまでにも多くあったのですが、一般の方々が話題にしやすいこと、疑問に思っていること、についての研究は多くありませんでした。「蚊は人に寄ってくる」のですが、そのしくみや、誘引の要因、刺されやすい人、などについては実験が少なく、自分でも確かめたいと思っていたのです。そして、マスコミや人々が知りたがっているような血液型と刺されやすさなどについても実験しました。さらに、それを、「誘引捕獲」に結びつけていければと思いました。 リポーター:確かに、様々なマスコミに協力されていますよね。研究データはかなり有効に活用されたのではないですか? 白井:そうですね。「誘引」というのは、蚊の調子にも左右されますから、大変難しいテーマです。それでも、いくつもの傾向をつかめたこと、それが生かされたことは良かったと思っています。 |
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リポーター:研究者として、医学博士でありながら、捕獲器の開発や、害虫駆除、とりわけ蚊の駆除もされている。いろんな面を持っておられますね。 白井:そうですね。大学に長くおりましたから、実験や調査を行って学会発表や論文作成もしますし、メーカーにもおりましたから、商品開発にも興味があります。商品開発では、一般消費者に直接渡るものについて仕事ができるということにやりがいがありました。さらに進んで、実際に蚊で困っている方々に直接役に立つには、実際にその家やビルに伺って蚊を退治するのが有効なんです。それぞれの現場によって、対策も異なりますし、幼虫が発生している場所を自分では見つけられないという場合に、私が見つけることで、蚊を激減させられる。これが、最も蚊対策に結びつく近道なんです。 |
| リポーター:なるほど、研究者でありながら、現場作業もされるわけですね。大変ですね。 白井:確かに大変です。蚊も生物であり、「こうした場所に発生する」といった定義は一応あるのですが、例外に出くわすことも多々あります。そうした生きた知識を得るには、現場に出るのが一番です。そこで、専門書や手引き書に書いてあるような対策を行っても、うまくいかないことが分かるという発見があったり、お客様の求めていることなどを実感できます。しかしながら、害虫駆除というのは難しい分野です。うまくいって感謝されることは嬉しいことですが、うまくいかずに、不本意な結果に終わり、悔しい思いをすることも多いですね。 リポーター:商品開発に関することもされるのですか? 白井:はい。様々な分野の開発段階検体の効力試験などを行っています。無処理(対照)に比べて効果がある時などは、嬉しいですね。また、統計処理をして、有意差が出るようだとなおさらですね。大学時代やメーカー時代の経験が生かされ、商品開発も楽しいです。 |
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リポーター:蚊の駆除ということですが、実際に依頼される方は多いんですか? 白井:いえ、まだ多くありません。シロアリでしたら、自分の財産である「家」がかかっていますし、ネズミやゴキブリでしたら、飲食店などの死活問題になります。また、スズメバチだと、1回刺されるだけで生命に関わることになりますから、駆除依頼があります。しかし、蚊というのは、まだまだ「痒いけど我慢する」「蚊取り線香などでしのぐ」というのが多いです。墓地に蚊が多くても、それが普通という認識になっていますから。しかしながら、子供が刺されてとびひなどになっては困るという、衛生意識の高い保育園や、一般の害虫駆除業者ではチカイエカ対策がうまくいかずに御依頼される病院、何とか蚊のいない夏を過ごしたいという一般の家庭などからの依頼があります。蚊も昔から、日本脳炎やフィラリア、マラリアなどをうつし、いろんな悪さをしてきた虫であり、「いないにこしたことがない」虫ですから、今後、衛生意識の高まりによってニーズが高まる可能性はあります。 リポーター:アメリカでのウエストナイル熱が特に心配ですね。 白井:そうですね。いったん日本に入ると、再びウエストナイルウイルスのない国に戻るのは難しそうです。毎年患者が出ているアメリカでの例がそれを示しています。日本でも十分に蚊が多いわけですが、病気がない状態が続けばいいですね。 |
| リポーター:自分で蚊の対策をしたくても、学校でそういう授業もありませんでしたし、参考になる本などもあまりないですよね。 白井:おっしゃる通りです。小学校、中学校、高校はもちろん、大学でもいまや寄生虫・衛生動物を学ぶ機会は少ないですし、蚊の本としては、学術書がほとんどで、一般向けの本はほとんどありません。そこで、講演会を開いて、一般の方々に聴いてもらったり、「蚊がわかる!蚊の誤解と正解」や「蚊の対策がわかる 蚊の教科書」といった本を出版してきました。こうして、蚊駆除業者に頼りっきりではなく、個人個人の努力で蚊に対する対策を行っていきたいものですね。しかしながら、講演に来られる方々、本を購入される方々は衛生意識の高い方がほとんどで、ボウフラをたくさん発生させていて無頓着な方は、講演を聴いたり、本を読まれませんので、そのような場合は、指導や勧告も必要になってきますね。 |
リポーター:確かにその通りですね。講演や本で知識を本当に得て欲しい人に伝わらないことがありますね。 白井:大きな問題が起こらなければ良いのですが、ボウフラを発生させて、大発生した蚊が隣家に侵入し、隣人に迷惑をかけている事例があります。周囲に対する配慮も必要になってきますね。 リポーター:今後の抱負はありますか? 白井:蚊などの害虫だけで仕事をするのは難しいのでは?とか、蚊の調査といっても、不審な扱いをされることがあるように、まだまだ理解されにくい仕事ですが、応援いただけるお客様やマスコミの方々がいて励みになります。今後とも、様々な角度から、蚊の対策と、それを支えるような活動を行っていきたいと思います。 |